人々が不安を強く抱く社会には、必ずといっていいくらい悲観的な未来予測本が流行する。
『私が見た未来 完全版』もその1つといっていいだろう。
触れ込みにあるとおり「東日本大震災を予言した」漫画の改訂版だ。
今回、出版された完全版も収録作品は旧版と大きくは変わらない。
最大の特徴は新しい予言(?)として、2025年7月に大きな災害が起きるとされていること。
そして、著者自身の解題が入ったことだ。
東日本大震災予言の根拠は表紙に「2011年3月」と書いてあったこと、
さらに作者自身が津波の予知夢を漫画に書いていることだったのだが......。
完全版を読んでみて衝撃を受けたのは、作者自身が震災と予知夢の関係を
真正面から否定していることだった。
いわく漫画の中で描いた夢は半袖の夏服姿だったが、東日本大震災は肌寒い3月であり、
夢で見た津波の高さはもっと巨大だったという。
確かに漫画本編の中で津波による災害は描かれているが、
それが2011年3月11日に起きるとは一言も書かれていないし、
ましてや東北で起きるとも書いていない。
東日本大震災を予言した漫画というのは、人々の勝手な読み込みだったのだ。
著者自身がオカルトに引かれやすいタイプだと分かったのも収穫の1つだったが、
確信を深めたのは読者にも似たような傾向があることだ。
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