
中村天風師が大陸での戦時中、新たに派遣されて来た、
直真影流免許皆伝の部下と共にモンゴルの騎馬民族相手の白兵戦に及んだ時、
その部下が恐れすくんで何もできなくなってしまったという逸話などは、
まさに相応な武の修練を積んで来た者ならではの現象である。
実戦でも有効な、本物の武芸を認可されるほどに修めながらも、
未だ実戦に臨んだことがない者こそが抱く、
自らの積み重ねがすべてフイになりかねないことへの恐れもあっての畏縮。
現役時の稀勢の里なども、その手の恐れに囚われてしまった上に、
負けたら死ぬ競技でもないからとて、白鵬に負け越すのが常態化してしまった
せいもあって、引退時まで完全に脱却することができないままに終わった病理。
それはそれで、武人こそが乗り越えていかねばならない精神面での障壁なのだが。
ろくな積み重ねもないズブの素人こそはそういった恐れに駆られることもなく、
自分が強い人間だからこそ抱けるものと思い込んで発露させた、自暴自棄状態の
命知らずさで捨て身になったりもするもので、そんなのはちゃんと死への恐れを
抱ける素人にも及ばない、虫ケラ然とした卑小さであるのだとわきまえねばならぬ。
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